寺島研究室 2007年度研究予定のテーマ
○コンサートホールの総合的な音響設計に関する研究
従来コンサートホールの音響設計においては客席における音環境整備に重点が置かれきたが、実際には演奏者などに対して最適な音響を提供するステージ上の音響設計も重要であり、本来受音側・音源側双方のバランスの取れた音響設計が望まれる。当研究室では、オーケストラ指揮者の特殊な役割(音楽を演奏すると同時に聴衆と同じ立場で音を聴く)に着目し、指揮者の音楽構築における音響心理的なプロセスをモデル化し、ホールの音響条件により現れる影響について研究している。モデルを同定することにより最終的には、指揮者に最適な音場、すなわちホール全体のバランスがとれた音場を提供する音響設計が可能であろうと考えている。無響室においてスピーカやDSPを用いて仮想のホールにおける音場を作りだし、指揮者を被験者とした音場評価実験を行うなどして、様々な条件下における音響パラメータの最適値を検討する。また、作成された指揮者モデルは、 汎用性の高い非線形間接制御系モデルとして考えられ、ゲームやビークルシステムなどへの応用も可能と思われる。
また、指揮者がどのようにホールの客席部における音響状態を推定して音楽を構築するのか、そのメカニズムの解明は非常に興味深いものである。このメカニズムをモデル化できれば、上記指揮者モデルに組み込むことにより、一層適切なステージ音響設計が可能となるであろう。指揮者は、ステージ上の音場からなんらかの情報を得ているのか? それとも視覚あるいは建築的な情報を駆使しているのか?
○視覚情報を効果的に用いた音響設計
コンサートホールなどにおける音体験は、常に視覚情報の影響を受けている。
視覚情報が残響感や音の拡がり感に対して与える影響を明らかにすることにより
素晴らしい音体験の可能な音響設計の実現を目指す。
○三重大学キャンパス内の音環境(三重県海浜地域の音環境整備)
三重大学は環境の良いキャンパスを持つと言われるが、東側に走る海岸道路と23号線に挟まれた
道路騒音の影響を受けているため音環境的には決して恵まれていない。
またキャンパス内の音風景(サウンドスケープ)を構成する重要な要素である町屋海岸からの波の音もさまざまな障害によってほとんどキャンパス内では聴くことができない。キャンパス内の音環境の調査を行い、将来のキャンパス内の音環境について考える。
○波音の導入による海浜地域の音環境整備に関する研究
近年、地域や都市の音環境に対する感心が高り、騒音を排除するだけでなく、
積極的な音の演出や保存といったサウンドスケープ的なアプローチによる整備方法の研究が重要になってきている。
三重県の海浜地域、たとえば三重大学キャンパスは豊かな自然環境を持つ一方で、
東側に走る海岸道路と23号線に挟まれた道路騒音、
そして中部国際空港離発着の航空機騒音による影響を受けているため音環境的には恵まれているとは言えない。
これらは騒音として取り除くことは難しいが、
本来風土として存在する音によってマスクすることができれば、
自然環境豊かな地域に相応しい快適な音環境を実現することが可能であろう。
当研究室では、立地の特徴としての波の音をサウンドスケープの重要な要素と考え、
波音の敷地内への導入を主体とした音環境整備の手法について検討を続けてきている。
現状では、波の音は気象条件が整った時を除いてほとんどキャンパス内では聴くことができない。
しかし、堤防の形状や高さ、堤防道路の交通騒音対策、キャンパス内の建物配置や植生計画等によって、
波の音が聞こえる(海を意識できる)キャンパス音環境を実現することは可能と考えている。
この研究においては、海岸部での波音の伝搬状況を詳細に測定するとともに気候風土との関連性を分析し、
キャンパス内で波音を聴くことができる範囲および条件を音線計算により推定し、
さらに堤防などの構造物の形状による影響を明らかにする。
○その他